株式会社学情
- トップページ
- 審査基準・指針
- 付与事業者の取組事例
- 株式会社学情
2023年5月11日掲載
個人情報を重要な経営資源と位置づけ従業者教育に尽力 先駆けて取得し、継続維持することが信頼の獲得に
学生や若手社会人など次世代を担う世代と、企業の価値あるマッチングを支援する、就職・転職情報会社「株式会社学情」。重要な経営資源となる個人情報を管理・運用する基盤として、制度創設年にプライバシーマークを取得。先駆けて取得した理由や、約25年にわたり継続更新している意義・効果について伺いました。
お話を伺った取締役 乾 真一朗様
企画部 部長 兼 内部監査室 室長 澤田 和明様
※澤田様は大阪本社よりWEB会議にてリモート参加
会社概要
株式会社学情
本社の所在地:東京都千代田区有楽町1-1-3 東京宝塚ビル7階
1976(昭和51)年創業/283名(2022年10月31日時点)
会員数200万名の「20代向け転職サイト〈Re就活〉」や、会員数40万名の「スカウト型就職サイト〈あさがくナビ(朝日学情ナビ)〉」の運営を軸に、業界で唯一20代の採用をトータルでサポートする就職・転職情報会社。日本で初めて「合同企業セミナー」を開催するほか、外国人材の就職・採用支援サービスなど、若手人材の採用就職支援に関する多様なサービスを展開している。
取り扱う個人情報
- 登録ユーザー(求職者)の情報
- 求人企業主(依頼主)および自社従業員の情報など
- Pマーク付与…1998年11月、登録番号…10820003(13)
インタビュー
時代の変化を捉え、黎明期に取得
Pマークの創設初年度に取得され、就職情報会社では第一号と、先駆的な取り組みだったと思います。取得当時の背景や、狙いを教えてください。
インターネットの普及が急速に進みつつある、いわゆる時代の転換期に社員を教育し、個人情報保護に関する知見の底上げを図ることが取得の目的の一つでした。例えば、当時、主力事業だった就職情報誌事業では、掲載している求人企業の個別セミナーへの参加を希望する学生は、情報誌の中にあるハガキで応募していました。このように当時はお預かりした個人情報も紙媒体が中心だったのですが、弊社がインターネットサービスを立ち上げた1995年からデータとしてサーバで管理するようになり、多くの方の個人情報がインターネットを通じて世界中につながってしまう可能性があることを危惧しました。時代の変化に対する社内の危機意識も高まっており、この先ますます個人情報に関する規制や、取り扱いのルールが厳しくなることも想定できたため、早い段階で取得に向けて動き出しました。
対外的な効果として意識したのはステークホルダーからの信頼の獲得です。実際に情報を登録する求職者はもちろん、新卒採用ビジネスを展開する弊社にとって、大学側との信頼関係の維持は非常に重要です。Pマークの取得は、学生を守る意識が高く、個人情報を機微な情報として捉えている大学の担当者の方々に対してPR効果も大きいと考えました。現在もPマークは大学との信頼性の維持や関係性の促進に寄与しています。大学への配布物を含む弊社の広報媒体にはPマークを必ず載せており、社員の名刺にも入れています。
Pマーク制度が社会に認知される前に取得されています。何か反響はありましたか?
今でこそPマークに対する企業の認知は高まっていますが、制度創設当初は、“よくわからないもの”という反応だったのが正直なところです。ある意味弊社が制度のPRのお手伝いをしていたと言っても良いかもしれません。ただ、時代を経て取引先の企業様からのPマーク取得への要望も高まり、同業者も追随してPマークを取得する流れになったので、先んじて取得したメリットは十分にあったと思っています。
Pマークを約25年更新し続ける理由とはなんでしょうか。
持ち続けることが対外的な信頼獲得や、PRにもなっています。今では多くの企業が取得されていますが、Pマークを活用する上でも、13回付与されたことを示す登録番号末尾の(13)の数字がお客様とのより強固な信頼関係の構築につながっているのではと感じます。
さらに、この制度を利用し維持することで社内の個人情報の取り扱いに関するルールが明確になり、社員に適切な取り扱いを遵守してもらう動機にもなっています。Pマークを持っていなければ社内での個人情報の扱いがぞんざいになるわけではありませんが、社員のリテラシーの維持のためにPマークの更新には意味があると感じています。
また、お客様との取引においても、Pマークの取得について確認されるケースが年々増えています。反対に私たちが外部に業務を委託する場合にも、安心して取引を行うための選定基準としてPマークの有無を重視します。このような事からも、Pマークとそれに紐づく個人情報保護体制の維持・継続が事業運営に大きく影響していることを実感しています。
25年にわたる継続的な社員教育で意識定着
社員のみなさんへの教育はどのように行っているのでしょうか。
まず弊社の事業における個人情報保護の重要性を理解してもらうことが必要であると考え、入社時すぐに個人情報保護研修を受けてもらっています。その後も毎年実施する全社員への教育に加えて、情報漏えいなど個人情報に関するトピックの共有も折に触れて行っていますので、在籍2~3年目の社員にもなれば個人情報保護に対する意識は根付いていると思います。Pマークを取得して25年経つので、古参の社員はなおさらです。社内において個人情報は経営資源として最も重要なものの一つという意識は社員全員に定着していると思います。
そして、長く維持するためにはいかに他人事にしないかが重要だと考えます。例えば就職・転職イベントの来場者情報も、以前は紙で管理していました。会場で対応していた社員は個人情報が手元に何百枚とある状態を経験していますので、自分事として捉えやすかったのではないかと思います。
現在はデジタルに移行して紛失のリスクは減った反面、個人情報に触れる機会が減少したため、管理の意識が薄れてしまうことを懸念しています。時代の変化に応じた社員教育を行い、意識醸成することは、今後さらに必要性を増すと感じています。
効率的なPMS運用のために工夫していることを教えてください。
弊社は新卒者の採用だけでなく、通年で経験者採用を行っており、その際にかかる新規入社者への教育コストが問題になりました。そこで、集合形式で都度実施していた研修は、講義を録画した動画を使用し、教材の通読とレポートを提出する形に切り替えることで、入社時研修の効率化を図りました。
組織的な部分で言うと、私がPMS運用の担当になったのが、2010年。加えて2020年から、内部監査室の室長を兼任していますので、監査結果をタイムリーに教育内容へ反映できるようになりました。
御社の業務に応じた、特徴的な管理方法などはあるのでしょうか。
自社でウェブサイトを構築運用している面でいえば、サーバーサイドやログイン画面のセキュリティ、定期的なシステム監査、ペネトレーションテストの実施などが挙げられます。
また弊社は採用事業全般での顧客数が多く、取引社数は年間4千社ほどです。取引がないところを含めた営業活動でいうと、一人あたりの営業パーソンが100~200社とメールアドレスを交換しておりますので、標的型メール攻撃に関するリスクが高いと考えています。その対策として2016年に模擬訓練を開始し、現在も継続して行っています。
管理者として苦労されている点は何でしょうか。
経営者の個人情報保護へのモチベーションが高く、適切な個人情報保護体制の維持や事故防止に関してプレッシャーは感じています。
今特に脅威を感じているのは、外部からの標的型攻撃です。年々手口が巧妙化し、弊社が気を付けていても取引先がウイルス感染したことに気付かずメールを送ってくるケースも考えられます。社員の社歴の長さに関係なく平等に攻撃に合うリスクがあるため、近年は、どのようにしたら新入社員たちに注意を払ってもらえるかということに腐心しています。
また、個人情報保護法の改正への対応については、審査基準の変更なども含めて随時対応していく必要がありますが、時代の要請によるものという理解で取り組んでいます。
これから注力していきたいことはなんでしょうか。
個人情報漏えい等の原因の大半を占めるヒューマンエラーをいかに少なくしていくかですね。完全になくすことは困難であることは理解してはいますが、少しでもそうしたミスを埋めていけるようなシステムの導入を引き続き検討していきたいです。
コロナ禍を経て、弊社でもテレワークの導入など勤務形態に変化が生じています。こうした想定していない事態やそれに伴う新たなリスクにも柔軟に対応していきたいと思います。
信頼の証としてのPマークがより多くの方に届いてほしい
最後にプライバシーマークへのご要望をお聞かせください。
制度創設当初からPマークとともに歩んできた弊社としては、一般的にも認知が進み、なくてはならない制度であると感じています。今後も皆さまに安心してご利用いただけるよう、引き続きPマークの普及にはご尽力いただきたいです。また、変化が著しい昨今では、国内外の個人情報に係る動向などの情報提供を期待しています。
付与事業者の取組事例