「消費者から見た個人情報とプライバシーマーク」福長 恵子 氏

消費生活センターへの相談

 プライバシーマーク制度25周年、おめでとうございます。25周年にあたり、個人情報やプライバシーマークについて日頃感じていることを書かせていただきたいと思います。

 私は消費生活センターの相談員をしていますが、消費生活センターは地方公共団体や消費者庁、個人情報保護委員会と並んで個人情報の苦情の相談窓口になっています。全国の消費生活センターには、「就職活動で不採用になったが返送するといわれた履歴書が返送されてこない。紛失されたのではないか」、「ネット通販で商品を注文したら他人の名前や住所が記載された注文確認メールが届いた」という安全管理に関する相談や、「転職サイトに登録した際の個人データがセールスの勧誘に使われた」という第三者提供の相談、また、「契約時に複数の書類に個人情報を記載したが、それがどのように利用されるか事業者のホームページを見ても個人情報の同意書を読んでもよくわからない」という利用目的の明示の相談、「勧誘電話があったので私の個人情報の入手先を聞くと名簿業者とのことだった。私は承諾していないのに個人情報を使うのは違法ではないか」という名簿業者のオプトアウトの問題などの相談が寄せられました。私自身が受けた相談では「他人あてのDMが自宅に届いた」、「契約時に2年経てば私の個人情報を消去すると言われたのに2年過ぎても削除されていない」、「個人情報の削除要請をしたいが申し出先がわからない」、「詐欺サイトに名前や住所などの個人情報を知らせてしまったが悪用されないだろうか」などがあります。

 個人情報を保有している事業者は私たち消費者に的確で必要な情報を提供してくれますが、消費者は自分の個人情報がどのように取得・利用されるのか、また了解を得ないで目的外使用や第三者提供されることはないのか、個人情報の訂正や削除はスムーズにできるのかなど個人情報保護について高い意識を持っています。個人情報取扱事業者には、個人情報の取り扱いについてホームページなどで明確でわかりやすい説明をして頂くとともに、消費者の質問や要望に対して真摯に対応して頂きたいと思います。また消費生活センターに寄せられる疑問や苦情は、個人情報取扱事業者が取得・利用・保存・廃棄などの局面できちんと管理・運用していれば大部分は防げるのではないかと考えます。

消費者の個人情報保護についての情報リテラシーも高まっていく

 私はプライバシーマーク付与適格性審査会の委員になって14年になります。プライバシーマーク付与適格性審査会は法律の専門家、学識経験者、そして消費者団体等のメンバーで構成されています。審査員の方が文書審査と現地審査をし、継続的にマネジメントサイクルを回しながら個人情報保護のためのマネジメントシステムの運用ができると判断した事業者について報告説明があり、審議されます。審査会に参加して、プライバシーマークはJIS Q 15001を基本に、個人情報保護に関する法律、条令、さらには業界団体のガイドラインまで取り込んで厳しく審査され、付与適格性を認められた事業者にのみ付与されるということを再認識しています。このように厳格に審査され付与されるプライバシーマークだからこそ、個人情報保護に対する信頼の証になっているのだと思います。

 プライバシーマーク付与事業者数は現在17,600社ほどに増加しています。付与事業者数が増えていること、また最近は中・小規模の事業者からの新規申請が増えているように思いますが、個人情報保護の理解が深まり、マークが普及しているのだと喜ばしく思います。消費者のプライバシーマークに対する認知度も上がってきていますが、そうであるからこそ、付与事業者が事故を起こした場合は、企業として、より大きな信用の失墜となります。付与事業者が継続的にPMSを運用し、常に見直し、改善をしてプライバシーマークを維持し続けることは大変なことですが、維持することで社内の意識も高まり、事業者として社会的信頼を得、消費者からも信頼されるのです。プライバシーマークの付与事業者が増えれば、消費者にとってもマークを目にする機会が増え、消費者の個人情報保護についての情報リテラシーも高まることになります。それが社会全体の個人情報保護に関する運用レベルも上がるということになるはずです。

プライバシーマーク制度の役割

 さて、最近、デジタル化、オンライン化、グローバル化が急激に進む中で、今まで通り事業者は個人情報を守っていけるのか、ということが気になっています。オンライン取引が当たり前の今、事業者はたくさんのデータを利活用する一方で不正アクセスや抜き取りなどのサイバー攻撃から情報を守っていかなければなりません。今後はPMSの精度を上げることも求められていくのではないでしょうか。

 最後になりましたが、個人情報についてリスクも増えている今、信頼のマークであるプライバシーマークが果たす役割は大きいと思っています。今まで同様、「この事業者はプライバシーマークを取得しているので、個人情報保護に関して信頼できる事業者ですよ」と案内できるマークであってほしいと期待しています。

福長 恵子(ふくなが・けいこ)

・平成9年より消費生活センター相談員(現職)
・公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 顧問
・認定NPO法人 適格消費者団体・特定適格消費者団体 消費者機構日本 理事

お問い合わせ

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)
プライバシーマーク推進センター

〒106-0032
東京都港区六本木一丁目9番9号 六本木ファーストビル内

ページトップへ戻る