【講演レポート】自由住宅株式会社

2024年11月~2025年2月に開催した「新規申請を目指す事業者のためのプライバシーマークセミナー 事例紹介編」でお話いただいた内容をまとめました。

会社概要

自由住宅株式会社

  • 所在地:新宿区西新宿六丁目3番1号新宿アイランドウイング2階
  • 設立:昭和46年6月29日
  • 従業者数:54名
  • 主な事業:不動産取引業
  • プライバシーマーク取得:2021年10月
    登録番号:10700098(01)
  • 登壇者:代表取締役 渡部 卓也様

講演レポート

プライバシーマーク取得の目的

当社は請負物件の施工会社からスタートし、現在は仕入れから販売まで一貫して対応可能な総合住宅会社・自由住宅グループとして活動しています。Pマーク申請当時の自由住宅グループは、売主として、土地仕入れ・住宅販売を行う会社が2社、施工や建築工事、メンテナンスやリフォームを行う会社が1社、仲介不動産売買、各種相談をうける会社が1社で、会社管理および情報発信を行う当社からなる5社体制でした。

建築不動産業界は、リレーションシップで業務が成り立っている業界で、お客様をご紹介いただける不動産会社様や、メンテナンスやリフォームのため直接ご連絡をいただけるお客様、さらには協力会社様や提携企業様など多くのご縁で支えられています。個人情報の取り扱いも様々な局面で発生するため、運用管理の整備については、以前より課題として、私ども役員の中で取り上げられていました。

取得の目的には「内面的な強化」「外面的な強化」の2つの側面があります。
<内面的な強化>
1、グループ間の連携の強化
2、業務効率、業務改善に向けたDX導入の取り組み

人手不足対策、働き方改革関連法への対応を目的とした、中長期的な経営計画とした、内面的な強化。

<外面的な強化>
1、グループ間の資源の見直し
2、事業の拡大

「リレーションシップを強化する」、「販売拡大戦略を遂行する」という2つのテーマを掲げ、自社の認知向上、取引先である仲介不動産会社の作業工数低減支援の実行、他業種の企業様との連携、そして顧客サービスプログラムの充実化等といった新しいプロジェクトを立ち上げ、外面的な強化へのチャレンジ。

このプロジェクトを遂行する上でも、個人情報を含む情報データの適切な運用と管理は重要事項と捉え、グループ5社同時取得を目指しプロジェクトを実行しました。

取得の計画と流れ

Pマーク取得に向けた取り組みとして、まずはプロジェクトリーダーを任命し、計画書の作成と、プロジェクトの推進方法を策定しました。
通常業務を実施しながらのプロジェクトですので、途中でプロジェクトが止まってしまうこと、通常業務への支障とならないか、などの不安要因がありましたが、まずはプロセス(工数管理)進捗管理(スケジュール管理の策定と可視化)をポイントに掲げ、実行しました。

まず取得までに掛かるプロセスを前半・後半に分け、前半<準備プロセス>、後半<始動プロセス>と位置づけました。
前半<準備プロセス>約2か月、後半<始動プロセス>約11か月を要しています。

前半<準備プロセス>の主な流れは以下の通りです。
①Pマーク取得計画の立案と検討
・取得に向けた準備計画とその検討。それと並行して個人情報のチェックシートを作成してグループ各社の個人情報を整理しました。
②コンサルティング会社の選定
・5社同時取得という目標のためにコンサルティング会社による支援が必要と考え、①と並行して、コンサルティング会社の選考を実施しました。
③プロジェクトメンバーの選出
・プロジェクトメンバーは各社から1名選任しました。
④実行案の確定
・後半<始動プロセス>に向けた実行案を確定しました。

後半<始動プロセス>の主な流れは以下の通りです。
⑤WBS(作業分解構造図)を作成
・作業進捗やゴールのイメージを持つことができ、完了までの継続の励みとなりました。
⑥フェーズ毎のカレンダー
・5社の進捗や足並みを揃えるのに有効でした。
⑦議事録による社内共有
・各社への理解、協力要請の業務調達の配慮に有効でした。

作成した帳票の実例について

取得を目指すプロセスの中で使用した社内資料の一部をご紹介します。

・実例①:個人情報チェックシート表

社内の個人情報を洗い出し、個人情報チェックシート表にまとめました。

実例②:取得までの作業表

取得までに行う作業を洗い出し、リスト化しました。

③:カレンダー

申請に向けた進捗カレンダーです。

実例④:個人情報保護管理者ミーティングの議事録

各社、役員関係者への進捗共有を行うために作成しました。

個人情報保護体制とPMS構築作業の進め方

個人情報保護体制として、まずプロジェクトリーダー1名を軸に、各社より1名選任し、合計6名のチームを編成しました。チームに対して『PMS構築作業において生じた課題は業務に連動させ、実務に活かすこととし、Pマーク取得が目的・ゴールではない』という認識を事前共有したうえでPMSの構築作業を開始しました。

PMS構築作業の進め方

まずプロジェクトメンバーの中で進め方についての検討・社内規程や様式案の作成作業等を実践し、その結果や疑問を持ってコンサルティング会社の指導を仰ぐといった手順で進めました。
スタート時は「何をしたらよいのか分からない」、「課題も見えないから、結果や疑問も出てこない」という状態から、数ヶ月後には一つの回答のみならず、相互関係も含んで、体系的に物事を捉えることができるようになりました。

個人情報の特定と業務フローの作成

個人情報の取得から管理の流れを拾っていく形で、リスト化しました。グループ内でも会社ごとで事業内容が異なるため、取得・提供・委託等の概念をすり合わせることに苦労しました。

安全管理措置への対応

安全管理措置のうち技術的・物理的な措置の対応例をご紹介します。技術的な措置として、主にサーバー・PC等の機器類の整備と管理の仕組みを構築し、インフラ環境の整備も同時に実施しました。
物理的措置として執務エリア・共有エリアの区分や入退室の管理などを行いました。

規程と様式の整備

法令遵守として対応が必要な項目については社内業務フローの見直しを行いました。
規程や様式を作成してからも、記載されている内容が正しいか、実際の業務運用に適した内容が網羅されているかの確認、足りない場合はどのように補うのか等、実際に業務を行いながら適した内容へ修正・追加、検証しました。

教育・運用における「気づき」と「効果」

役員向けの個人情報に関する講習を皮切りに、全社員に向け講習会を実施しました。時期的にコロナの収束期ではありましたが、リモートではなく、あえて座学で開催しました。
対面で実施することで、各社の職種ごとによる質問内容や感度の違いを感じることができました。個人情報保護法の遵守は理解できても自身の業務負荷への不安、といった意見や質問が多く寄せられたことからも、社内の関心度が高いことが分かりましたし、今後の運用方法への課題が見えたことが、とても有効だったと実感しています。
また、各社に相談窓口を設置したことで、実務や作業に近い場所での質問対応や、課題の吸い上げ、本部での社内ルールの作成などスピード感を持って行動できました。

作業時間について

コンサルを交えたミーティングは全部で28回実施し、その他に社内メンバーのみの作業もあり、1回当たり2時間から3時間としますと、集合作業としては、110~168時間のミーティングを重ねました。この時間には、各社ごとに実施している個別作業は含まれません。この作業時間は、あくまで参考としてください。

振り返り

Pマーク取得はトップダウンによるプロジェクトですが、メンバーの理解と職場の協力がなければ達成できないプロジェクトでした。業務のミッションを理解するとともに、メンバー間で意見・疑問を言い合える雰囲気づくりも重要だと感じています。
プロジェクトの推進に当たっては、スケジュール管理を徹底し、5社の進捗状況を合わせて実行したことで、グループ各社の間での情報共有はもちろん、コンサルティング会社への運用相談においても効果的に行うことができました。
振り返ると、計画作りから始まり、その後のスケジュール管理、実務に繋がる効果測定等のPDCAを共有できたことで、ほぼ計画通りに進めることができました。

プライバシーマーク取得後の効果と今後の課題

Pマーク取得の効果についてお話しします。

  • お客様からのアンケートを取得しやすくなりました。
  • 社員の個人情報の取扱いに対する意識が変わりました。
  • 取引先会社様にも協力いただき、社内の仕組みを変えることができました。
  • お客様や取引先様に個人情報保護法やPマーク取得方針の説明にご理解をいただけるようになりました。
  • 顧客サービスプログラム、異業種企業との協業、契約作業サポート支援など、事業拡大に関連して業務効率化に繋がりました。

自社の今後の課題についてお話しします。

  • 攻撃型ウィルス対策等の恒久的に継続する対策への対応
  • 法改正などに順応するための社内整備と取組み
    今後の法改正等への変化に対し、組織全体で適切な対応ができるような意識を根づかせることが必要だと感じています。

人手不足、働き方改革関連法への対策、DX化などの社内強化、さらにリレーションシップ連携、業種連携、顧客プログラム施策など社外の連携強化を進めていく中で、お客様情報の適切な取り扱いのため、Pマーク取得という目標を掲げ、標準化、適正化を進めた結果、グループ5社同時に取得することができました。
2024年5月に会社統合を実施し、3社となり更なる連携強化を進めております。

発表では伝えきれない部分もあるかと思いますので、ご質問等ございましたら当社窓口担当者へお気軽にご連絡下さい。不動産業、建築業、住宅販売業、そして管理本部という職種においてPマークを取得しております。その経験から皆様のお力になれる部分もあるかと思います。
尚、パートナー企業様としての連携強化も進めておりますので、こちらもご連絡をお待ちしております。
本日はありがとうございました。

お問い合わせ

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)
プライバシーマーク推進センター

〒106-0032
東京都港区六本木一丁目9番9号 六本木ファーストビル内

ページトップへ戻る