NewsPicksスポンサード記事『【経営者必見】企業価値が向上する「3つのプロセス」』

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公開日:2024年5月7日

JIPDECでは、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」へ、スポンサード記事『【経営者必見】企業価値が向上する「3つのプロセス」』を掲載しました。以下に全文を掲載します。すべてのビジネスパーソンにお読みいただきたい内容となっていますので、ぜひご覧ください。

2024/4/27 NewsPicks Brand Design

日本において「企業価値の向上」が叫ばれて久しい。
時価総額においては、バブル期の1989年には、日本企業は世界のランキングのトップ10に7社が名を連ねたが、2023年時点では30位以内にさえ1社も入っていない。
GAFAをはじめとする海外企業の躍進と比べるとあまりにも対照的だ。
企業価値の基準は時価総額以外にもさまざまあり、多くの経営者がその向上のために試行錯誤を続けるが、実現には何が必要なのだろうか。
スタートアップの成長を支援するシニフィアン代表の村上誠典氏は、「“3つの価値”を高めることが必要」と指摘する。
そのインタビューから「今の時代における価値向上の条件」を探った。

兵庫県出身。小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学等宇宙開発に関わる。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて多様なステージ・文化のグローバル企業の経営・ファイナンス戦略に関わる。退職後、未来世代に引き継ぐ産業創出を目指し、シニフィアンを創業。ポストIPOスタートアップを提唱し、未来産業の担い手たるグロース期に入ったスタートアップおよび経営チームを、IPOを通過点として長期的な目線で支援。ガバナンス、ファイナンス戦略を軸に、事業戦略や人的資本戦略など経営および経営戦略の磨き込みを通じて長期的な企業価値向上、社会価値向上を目指す。SHIFT/SmartHR等急成長を続けるスタートアップの経営に多数参画。多摩大学大学院客員教授(ESG時代のサステナブル経営)。著書「サステナブル資本主義 5%の『考える消費』が社会を変える」

企業価値の定義はシンプル

──そもそも「企業価値」とはどのように定義されるのでしょうか。

村上 ファイナンスの世界における企業価値の定義はシンプルで、「企業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の総和」を指します。そこには「企業価値は財務上の数字で測れる」という考え方が前提にあります。

 本来であれば“価値”という言葉には、金銭的なもの以外にも様々な意味が含まれます。しかし資本主義社会の中心的プレーヤーである株主からすると、企業が行う活動を全て把握し、生み出される価値を一つひとつ計算するなんて面倒なことはやっていられない。だから「細かいことはよくわからないので、この先5年、10年でどれくらいキャッシュを生み出せるかを教えてくれ」とできる限りシンプルに理解できる指標を求めるわけです。

 この定義に則ると、企業価値の向上とは「将来生み出すキャッシュフローの現在価値の総和を最大化すること」であり、そのゴールを達成することが経営の仕事になります。

 とはいえ、これはあくまで最終的な到達点であり、いきなりそこへジャンプできるわけではない。そこで経営の仕事をブレイクダウンすると、「3つの価値」を高めるプロセスが必要になります。

──「3つの価値」とは?

村上 1つめは「予見しやすいものの価値」を高めること。その代表が売上や利益といったキャッシュフローに直結する指標です。

 今期の数字をもとに「来期は売上を1兆円から1.2兆円に増やします」「利益を1000億円から1200億円に増やします」といった目標を立てることは、既にある規模の改善であり、予測蓋然性は比較的高い。

 先ほど説明したように、株主や投資家もこうしたわかりやすい指標をもとに企業価値を算出するので、予見しやすいものの価値を愚直に高めていくことが経営の仕事の一つになります。

 ただし繰り返しになりますが、本来であれば売上や利益だけが企業の生み出す価値ではない。「予見しやすいものの価値」が全てではなく、「予見しづらいものの価値」が存在するわけです。これが2つめの価値になります。
 

──具体的には何が「予見しづらいものの価値」に該当しますか。

村上 組織力や営業力、技術や人材、ブランドなど、企業活動に関わるあらゆる物事が含まれます。キャッシュフローは一つの数字ですが、その数字に至るまでに企業活動は実に複雑です。

 例えば、製造業であれば、ネジの品質はどうなのか、工場を動かす電力をどこから調達するのか、生産現場は効率的に回っているのかなど、非常に細かいオペレーションが複雑に重なり合って企業活動が成立している。複雑であればあるほど、そこから生み出される価値は予見しづらくなります。

 しかし予見しづらいからと言って、経営者が予見しやすいものの価値ばかり高めようとしたら、サステナブルな経営はできません。利益を最大化するために従業員の給与をカットすれば、短期的にはキャッシュフローが増えるかもしれませんが、働く人たちのモチベーションは低下する。予見しづらいものの価値が失われ、いずれ経営を持続できなくなる可能性があります。

 よって経営者は1つめの価値と同時に2つめの価値も高めなければいけません。昨今、非財務指標や人的資本が注目を集めているのは、この価値に着目したものだと言えます。

 さらにもう一つ、経営者がやるべきことが残っています。それは予見しづらいものの価値を高めた上で、キャッシュフローに転換すること。これが3つめの価値です。

──「予見しづらいものの価値をキャッシュフローに転換する」というのがイメージしにくいのですが……。

村上 代表的な事例がテスラです。

 まだガソリン車が主流だった頃に、イーロン・マスク氏は「これから電気自動車の時代が来る」と考えた。でも創業した時点では、このイノベーションが将来どれくらいのキャッシュフローを生み出すかは極めて予見しづらかった。おそらく来年の売上さえ見通せないほど不確実性が高い状態だったはずです。

 

 それでもマスク氏は電気自動車がいつか大きなキャッシュフローを生み出すと確信し、技術や組織、設備など予見しづらいものの価値に投資を続けました。そしてある時点で「5年先、10年先の売上や利益はいくらになりそうか」が予見できる状態に切り替わり、投資家もテスラが将来生み出す価値を財務諸表のわかりやすい数字で理解できるようになった。

外部ステークホルダーからの予測蓋然性が高まれば高まるほど、より良いリソースが調達できるようになります。株主からの評価もその一つです。そうしてステークホルダーを増やしながら、同社の株価は一気に上昇し、時価総額は世界トップクラスへ躍り出ました。

 これが「予見しづらいものの価値をキャッシュフローに変える」ということであり、経営がここまでやって初めて企業価値を最大化できるわけです。

 

企業価値に転換する力が弱い

──テスラのような企業が躍進する一方で、かつて世界の時価総額ランキングで上位を占めていた日本企業はその座から転落し、企業価値を相対的に低下させています。これは日本企業が「3つの価値」を高められなかったことが原因ですか。

村上  正確に言えば、3つめに挙げた予見しづらいものの価値を企業価値に転換する力が日本は弱かったということです。

 バブル崩壊以降、投資家からのプレッシャーを受けた日本企業は「予見しやすいものの価値」を高める経営にシフトし、この20年間はキャッシュを増やすことに注力してきました。

 ところが目の前の売上や利益に集中している間に、市場ではイノベーションが次々と起こり、多くの経営者はそれらに対応しきれませんでした。

 電気自動車はその典型で、日本企業もこの新しいビジネスに投資はしたものの、価値に転換できなかった。それを最初に成し遂げたのがテスラでした。GAFAをはじめとする海外の新興勢力に日本が競り負けたのも同様の構図といえます。

 かつての日本企業は予見しづらいものの価値を高めるのが得意だったし、近年は予見しやすいものの価値も一生懸命高めてきた。でもその2つだけでは不十分ということ。今の時代に企業価値を向上させるには、経営が3つの価値を同時に高めていくことが条件となります。

 

──3つの価値を高めていくために、企業の経営層にはどのような思考や行動が求められますか。

村上 新しいものや不確実なものに果敢に取り組むアントレプレナーシップが必要です。

 3つの価値を高めるプロセスのうち、経営にとっても投資家や株主にとっても一番ストレスが大きいのは、予見しづらいものの価値を高めるフェーズです。予測できないことはわかりにくいので、経営者が「水素事業に投資すれば企業価値が向上します」と説明しても、株主は「本当か?」と疑いの目を向け、「そんなものに投資するのはやめてくれ」と言われてしまう。双方ともにイライラする状態です。

FangXiaNuo / GettyImages

 しかし世間が否定することに挑戦するのがアントレプレナーシップです。今は蓋然性が低く予測できないことに挑戦しなければ、大きな価値を生み出せない時代です。経営はストレスを乗り越え、予見しづらいものの価値をキャッシュフローに変える努力を続けなければいけません。

 しかし日本では、大企業にしろスタートアップにしろ、この段階をなかなか突破できずにもがいています。

 

──何が障壁になっているのでしょうか。

村上 ガバナンス(経営が健全に行われるために監督・評価する仕組み)の難しさです。

 予見しやすいものの価値だけにフォーカスするなら、ガバナンスはシンプルです。「来年の車の販売台数を1000万台から1200万台に増やす」という計画は議論のベースがわかりやすく、かつ予測可能性が高いので、経営がチェックすべきポイントもわかりやすい。生産や販売の体制等の計画を適切に管理すれば良いからです。

 これに対し、予見しづらいものは一気に難易度が上がります。企業活動に関わるあらゆる物事が含まれるため、経営がチェックすべきポイントも無数に存在する。しかもそれらに広く目を向けた上で、全体のバランスを考えなければいけない。手元のキャッシュを全て注ぎ込んだら会社が潰れてしまいます。

 
 将来の予測が難しいながらも経営として合理的に判断し、自分たちがやりたいことを達成するために最低限満たすべき要件を多様な観点からチェックする。これが今の時代に求められるガバナンスです。

「攻め」と「守り」のバランス

──不確実な状況下で合理的に判断する。確かに難易度が高いミッションです。

村上 あえてわかりやすい表現を使いますが、ここで重要なのは「攻め」と「守り」のバランスです。アントレプレナーシップが必要と聞くと、とにかく攻めの経営に徹すればいいと考えがちですが、それは誤解です。

 私は数多くのスタートアップを支援してきましたが、成功するのは大抵の場合、「行動は攻撃的で、メンタルは守備的」な経営者。山登りにたとえるなら、「エベレストに登頂するぞ!」とアグレッシブな目標を掲げる一方で、「どんな防寒着が必要か」「食料は何をどれくらい用意すべきか」「登頂に必要な体力をつけるにはどんなトレーニングをすべきか」など細かい要素を一つひとつチェックして守りを固めるタイプです。

 攻撃的な行動に伴うリスクを熟知し、失敗しやすいポイントを理解して周到に準備するから成功できる。まさに「守りこそ最大の攻め」です。

 

──ビジネスの場合、経営がチェックすべき「守り」の要素にはどんなものがありますか。

村上 経営管理や財務、組織、人的資本、R&Dなど本当に様々です。経営管理ができていない会社は、自社の状況を正しく把握できないので、経営判断のミスや遅れにつながる。財務基盤が整っていないのに過剰な投資をすれば会社が潰れるし、人的資本に投資して強い組織を作らないと高いパフォーマンスが出せず競争力が低下する。「ここを押さえないと失敗するよね」という要素はどれも守りのチェックポイントに該当すると考えていいでしょう。

 近年は情報管理や情報セキュリティも守りの要素として重要性が高まっています。個人情報の漏洩やシステムの誤作動などのインシデントが起これば、その企業に対する信用力の低下やユーザー離れにつながり、結果的に企業価値が毀損する。企業価値の向上を実現する上で、守りのガバナンスを利かせるべき領域であるのは間違いありません。

 
Galeanu Mihai/GettyImages

──特に起業してまもないスタートアップや新規事業創出の経験が少ない企業の経営者は、難易度の高い守りのガバナンスに苦労すると思います。自分たちが最低限満たすべき要件を正しく把握するためのアドバイスはありますか。

村上 守りの要素は多岐にわたるだけに、抜け落ちも多い。レベルの誤認も起こりやすく、自分たちは「これくらい守りを固めれば十分だろう」と思っていたら、世間が求める水準に達していなかったということもよくあります。

 それらを防ぐためにも、企業のガバナンスには多様な視点が必要です。社外取締役や監査役を置いて外部のチェックを受ける。あるいは外部の評価制度や認証制度を活用するのも、抜け落ちやレベルの誤認を防ぐのに役立つかもしれません。例えばSMBとの取引経験しかないスタートアップが新たにエンタープライズ市場に参入したいと考えた時、自社の情報管理が大企業の求める水準に達しているかを確認するために、情報セキュリティに関する認証制度の審査を受けてみるのも一つの方法でしょう。

 一つの要素に対して複数のチェックを入れるのは一見するとコスト増ですが、情報セキュリティの基準を満たすことで顧客の信用を得られれば、ビジネスの蓋然性を高めてキャッシュフローを増やすことにつながります。経営者は守りの要素にただ投資するのではなく、それをいかに企業価値に変えるかを常に意識してほしいと思います。
 

構成:塚田有香
撮影:小島マサヒロ
デザイン:田中貴美恵
編集:下元陽

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