株式会社研文社
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2018年9月7日掲載
印刷業界で他社に先駆けPマークを取得 お客様の高い要望にも対応できる徹底した安全管理と社員教育を実施
世界的ベストセラーとなった『ハリー・ポッター』シリーズの印刷・製本を手掛けた株式会社研文社は、創業70余年を誇る老舗印刷会社。大手の金融機関、自動車メーカーなどをメインクライアントとし、情報管理に対する意識レベルが高かったという同社は、印刷業界の中でいち早くPマークを取得しています。今回は安全管理対策をはじめとした個人情報保護への取組みをお聞きしました。
お話を伺った、代表取締役 社長 網野様(写真右)、取締役 専務執行役員 森様(写真左)、生産本部 生産企画部 品質保証・安全管理課 白鳥様(写真中)。
会社概要
株式会社研文社
所在地:東京都新宿区改代町45
1946年(昭和21年)創業/従業員数220名(2018年7月末時点)
東京、大阪のほか、兵庫・埼玉に工場を展開。
書籍等の一般商業印刷のほか、DMの作成、マニュアルの編集、企画・ブランディングやWebサイトの企画運営コンサルティングなど、印刷の枠に捉われない幅広い事業で多様化する時代のニーズに応えている。
取り扱う個人情報
- DM発送、名刺作成等の受託業務において受領した顧客情報
- クライアントや自社従業員の情報など
- Pマーク付与…2006年4月、登録番号…20000699(07)
- PMS運用事務局…生産本部 生産企画部
インタビュー
試行錯誤を繰り返してルールを構築
代表取締役 社長 網野様にお伺いします。Pマークの取得をめざしたきっかけは何ですか?
弊社は大手金融機関や自動車メーカーがメインクライアントです。クライアントの重要な資産である機密情報を多く取り扱っているため、情報管理や保護に対する社員の意識はもともと高かったように感じます。個人情報に対する社会的な認識の向上など、時代の流れも含めて考えたときにPマークの取得は当然のことでしたし、情報管理のルール構築のため、というのも理由のひとつでした。
例えば、自動車メーカーからの仕事には発売前の新車の情報も含まれます。この情報に係る業務を受注した際は、当然トップシークレットになりますので、工場外に印刷物を出さないための管理を行う、部外者の立ち入りを禁止するなど、情報が漏えいしないための対策を徹底していました。
しかし、当時は、高い意識を持ちながらも管理の手順やルールが明確でなかったため、物理的に機密情報を隠したり、社員へ呼びかけを行ったりするしかありませんでした。そんな中、印刷業界の団体側からPマーク取得推進の働きかけもあり、取得へ向けて動き出していきました。
安全管理への意識の高さはあっても、具体的にそれをルールに落としこんだり、マニュアル化したりすることは非常に大変だと思いますが、どのように進めていったのでしょうか。
個人情報の管理についてのマニュアルはすでにありましたが、それが実態に即しているものなのか、この水準でいいのかといった疑問はありました。当初はPマークを取得している会社が少なかったので、参考にできる事例も少なく、とにかく現場での試行錯誤でした。過去のトラブルを紐解いて、同じことが起きないようにするためにはどうするか、一つひとつ現場で模索し、運用ルール・手順を構築していくといった地道な作業を繰り返しました。
例えば、お客様との情報のやり取りがMO等の記録媒体での授受が主流であった時代は、お客様に渡す際にはデータのウイルスチェックをし、それを研文社の特別パッケージに入れ、途中で開封できないように検査済みのシールを貼り、さらに責任者が押印するなど、厳重な管理をしていましたが、これも現場の担当者と作業工程を一つひとつ確認しながらルール化していきました。
また、事務所や工場に社外の方が出入りできない壁の設営といった、物理的にできることを徹底して行い、各々が知恵を絞りルールの具現化やマニュアル化を進めていったことが現在の体制にも活きていると思います。
実際に運用をご担当されている白鳥様にお伺いします。Pマーク取得後、社員の意識や社外からの評価など、変化はありましたか?
社員への個人情報保護に関する意識付けはPマーク取得以前からできていましたが、取得後はより意識が高くなったと感じます。情報漏えいによって会社の信用が失われること、さらには会社の存続すら危ぶまれる事態になることを、PMSを運用する事務局の者よりも、日々お客様と接している現場の社員が一番感じているようです。
実際にメインクライアントである大手の金融機関や自動車メーカーが求める条件等は年々厳しくなってきていますので、必然的に個人情報保護の重要性を認識しているのだと思います。
クライアントからは、Pマーク取得以前より、高いレベルの情報保護、管理体制を求められていましたので、Pマーク取得は当然といったところでしょうか。Pマークを取得したことで、一定レベルの基準が満たされていると判断され、安心して仕事を任せられる企業であると評価していただいていることは実感としてあります。今では、Pマーク取得を必須とするクライアントも多く、取得していなければ仕事の受注ができないものとなっています。
当たり前のことこそ徹底的に
印刷業界ならではの取組みや工夫、留意している点は何でしょうか?
印刷物の完成品の管理はもちろんですが、特に、名簿類の余った用紙は二次使用せず、必ず溶解処理することなどを徹底・周知しています。
また、印刷を外部委託する際には、その委託先の管理には特に留意しています。個人情報に係る事故は、委託先が原因となることも多くありますので、委託先の監督は非常に大きな問題として捉えています。具体的には、委託先の工場長と直接話し、紙の処理方法の周知はもちろん、工場内には携帯電話を持ち込まない、扉をしっかり施錠するといったように漏えいの要因になりそうなことを一つひとつ確認し、対応しています。
情報管理の意識向上のため、委託先の担当者を集めての研修会も行っています。
安全管理に対する意識の高さが伺えますが、対策において工夫されている点や注力されている点を教えてください。
工場の紙の管理と同様に、基本的なことを漏れなくチェックすることが大切だと思っています。例えば、事務所や工場への入退出管理はもちろん、従業員のPCや社用携帯電話等の管理、データへのアクセス制限など、基本的な対策をまずはきちんとやること。東京と大阪それぞれに監査員がいますので、彼らを中心に、パスワードが設定されているか、ウィルス対策ソフトがアップデートされているかなどのチェックを徹底して行っています。
また、最近では取引先との情報のやり取りにおいて、媒体ではなくシステム上での授受が増加していますので、サーバへのアクセス制限、データのダウンロード・消去の記録を徹底するとともに情報システムに対するセキュリティ強化に注力しています。
積極的な社員教育により高い個人情報保護レベルを維持
社員教育について工夫されている点などを教えてください。
社員教育としては、集合研修やテストのほか、新入社員には研修後にレポートを提出してもらっています。レポートの提出は研修で学んだことが本当に定着しているかどうかを確認するのに有効です。
機密資料を自宅に持ち帰ってしまったり、業務に関わる情報をSNSにアップしてしまったりという情報漏えいに関するニュースを昨今よく耳にしますが、どんなに社内教育を徹底しても、最新のセキュリティシステムを導入しても、結局大切なのは社員一人ひとりの意識・認識によるものが大きいと感じています。情報漏えいが会社の信用に関わるという意識を改めて根付かせられるよう、情報管理の重要性については常々伝えていくしかないですね。
クライアントから、常に高いレベルの管理体制を求められることには厳しさも感じていますが、社員教育を通じて今後もそのレベルを維持していかなければと思っています。
PMSを運用するうえで苦労されている点はありますか?
弊社はPマークのほかにも、ISO9001(品質)、ISO14001(環境)、FSC®(森林認証)といった外部機関による第三者認証を受けています。これらの第三者認証を毎年維持していくことは、事務局の負荷が大きいと感じています。特に、内部監査は東京と大阪の事業部のほか、各工場も含め5拠点が対象となるので、その管理やスケジュール調整に苦労しており、効率的な運用ができればと考えています。
現状の課題や目標などがありましたら教えてください。
最終的には事務局主導ではなく、部のリーダーなどの自主的な取組みだけでPMS運用ができることが理想だと感じます。そのレベルまでの意識向上を目指し、引き続き教育に力を入れ、社員一人ひとりが成長していくことを期待しています。
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